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更新日: 2021年01月25日

原子炉の再稼働に反対し、原子炉に頼らないエネルギー政策への転換を求める意見書

原子炉の再稼働に反対し、原子炉に頼らないエネルギー政策への転換を求める意見書

  
                                   
 2011年3月に発生した東日本大震災は、死者・行方不明者を合わせると1万8000人を超える未曽有の大災害となった。この震災の中で、東京電力福島第一原発の事故が発生した。この事故の影響により、福島県では、事故発生から2年以上を経てなお、15万人に及ぶ人々が先の見えない避難生活を余儀なくされている状況である。
 思い起こせば、新潟県を中心に中越沖地震が起きたのは、わずか6年前の2007年7月のことであった。東京電力柏崎刈羽原発の火災により黒煙を上げる悪夢のような映像が中継され、日本に住む私たちを震え上がらせた。柏崎刈羽原発の事故により、活断層地震の過小評価、耐震基準の甘さが露呈され、地震大国である日本における原発建設そのものに問題があることは明らかとなった。また、この直後に東京電力に対して、巨大津波による冷却機器系喪失の危険性についても申し入れが行われている。しかし、後から考えれば、強烈な「警告」とも思えるこの事故からほんの3年半の間に多くの国民意識からは地震と原発の脅威はほとんど忘れ去られたように思える。そして、悪夢はあまりにも酷い現実となって我々の前に現れたのであった。
 日本に原発をつくることが無謀なことであることは、地球規模でのプレート構成をみれば一目瞭然である。日本はプレートの沈み込む境界に沿って地震と火山により成長してできた島である。さらに、地球上で唯一、3つのプレート境界が陸上に現れる「地震の巣」であり、把握されている活断層分布だけから、発生しうる地震の規模を「想定」すること自体に無理がある。
 実際に、かねてから指摘のあった島根原発直下に存在する宍道断層に関しては、中国電力は1981年には「存在しない」としていた活断層について広島工業大学の研究チームなどの指摘を受け、3度の修正を行い、「22キロメートルの活断層の存在」を認めている。もはや活断層が正確に何キロメートル存在するのかは大きな問題ではない。そこに見えるのは活断層の正確な把握が困難であるという事実だけである。「想定」を超える地震により原発を支えている岩盤そのものが崩壊するような事態に対しては、自動停止装置などの耐震装置は無力であり、建造物の耐震基準などまったく意味を持たない。実際に、他国の原発立地が日本のようなプレート境界を遠く避けていることからも明らかである。
 加えて、決定的な問題は高レベル放射性廃棄物に分類される使用済み核燃料である。このたび、福島第一原発4号機の原子炉わきのプールから大量の使用済み核燃料を運び出す作業が始まったが、これらの核燃料は原発事故以来、原子炉そのもの以上の脅威となっており、取り出し作業においても周辺を高レベル放射能汚染にさらす危険性を孕んでいる。また、一旦は安全な場所へ運び出せたとしても、最終的な処分方法や処分地は宙に浮いたままである。
 現在考えられている高レベル放射性廃棄物の処理の具体的な方策は地層処分となっている。フィンランドでは、莫大な資金を投資し、地下400メートルの「オンカロ(洞窟)」に放射性廃棄物を閉じ込める計画が存在する。50年間の冷却期間の後、「厳重」に封印した廃棄物をその危険性がなくなる100万年閉じ込める。文明を持ってから数千年の人類が100万年間の管理の責任を負えるだろうか。そもそも地下670キロメートルまで震源が分布する日本では400メートルほどの深さに埋めてフタをしようというこの処理方法は全く通用しない。このように、多くの問題が指摘される原子力発電であるが、廃棄物の処理だけを見ても、全く解決策が見えない。
 柏崎刈羽原発の事故の記憶を驚くほどの速さで風化させた後に起きた福島第一原発の事故だか、この3度目の「被曝体験」も我々は過去のものとしようとしているのではないだろうか。
 昨夏の大飯原発再稼動は、多くの国民の反対意見を無視して強行されたものであった。現在、点検のために国内の原子炉は再び全機が停止した状態になっている。福島第一原発事故の処理もできていないまま、安全性の保障ができない原発を動かすことには大きな問題がある。我々の住む山陰にも先述したように島根原発の脅威があり、福島の悲劇は決して遠い場所の出来事ではない。「4度目の過ち」を犯さないためには日本が世界一の地震国であるという避けがたい事実を充分にふまえて、原子力発電を基幹とする国のエネルギー政策そのものの転換が必要であると考える。
 よって本議会は、政府に対し、下記の事項について要望する。

                                  記


 現在停止している国内すべての原子炉を再稼動させず、原子力発電を基幹電源とする「エネルギー基本計画」を見直し、原子力から再生可能な自然エネルギーへとエネルギー源を転換していくこと。


 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


平成25年12月19日

                       鳥取県智頭町議会 


 衆議院議長 伊 吹 文 明  様
 参議院議長 山 崎 正 昭  様

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